飲食店の店主で閉店を検討している人の中には、「居抜き売却」を考えている人もいるでしょう。
「居抜き売却」とは、店舗売却を考えている借主が店舗を「居抜き物件」として内装や厨房等の設備を次に賃借する人に対して売却することです。
主に、「居抜き売却」は店舗の閉店や移転を考えている人が退去費用を抑えるために利用します。
今回は「居抜き売却」のメリットや売却時の流れ、失敗しないための注意点を徹底解説します。
居抜き売却を検討している人はぜひ参考にしてみてください!
※本ページにはPRが含まれます。
Contents
居抜き売却のメリット
「居抜き売却」にはいくつかのメリットがあります。
実際に、店舗を閉店する際は閉店コストと呼ばれるコストがかかります。
やむを得ない事情で閉店をするのにも関わらず、莫大な費用が掛かってしまっては今までの利益も少なくなるだけでなく、最終的に赤字になってしまうかもしれません。
「居抜き売却」をするとコスト面で大きなメリットがあります。
場合によっては売却で利益を出して閉店することや移転の際の費用にすることもできる可能性も高いです。
これから「居抜き売却」のメリットを詳しく解説していきます。
原状回復工事費用が掛からない
居抜き売却をする場合、原状回復工事が必要ありません。
原状回復工事とは、スケルトン解体工事とも呼ばれ、壁紙から排水管など内装工事の際に設置したすべてのものを撤去し、コンクリートの状態に戻すことです。
通常の店舗の場合、店舗退店時はスケルトン状態で返却をするという契約が含まれていると思います。
そのため、退去時には原状回復工事をしなければなりません。
内装にこだわりを持っていた店舗ほど原状回復工事には費用が掛かりますが、居抜き売却をする場合はこの原状回復工事費用が全く掛からないため、退去時のコストを大幅に下げることができます。
原状回復工事の相場
あくまでも費用の目安ですが、原状回復工事の相場は以下のようになっています。
お店の規模 | 費用相場 |
---|---|
小規模店舗(30坪以下) | ¥12,000 |
中規模店舗(31~50坪) | ¥23,000 |
大規模店舗(50坪以上) | ¥50,000 |
造作譲渡料を得ることができる
「居抜き売却」を利用することで「造作譲渡料」を得ることができます。
内装や厨房の造作も売却できるため、設備の状態によっては高い値段が付くことも珍しいことではありません。
通常、設備を処分する場合は処分料もかかってしまいますが、売却する場合はコストの軽減のみならず利益になることは大きなメリットです。
営業を直前まで続けることができる
居抜き売却は工事の手間もなければ移設をする必要もありません。
つまり、内見と店舗営業を同時に進めることができます。
退店ギリギリまで営業をして、できるだけ売り上げを立てたいと考えている店主にとって、居抜き売却がおすすめです。
解約予告期間の短縮ができる
「居抜き売却」の場合、解約予告期間をできるだけ短縮して売却ができます。
店舗の移転を考えている場合は、まず、新しい店舗への移設が可能かどうかを検討しなければなりません。
しかし、「居抜き売却」をしてしまえば、原状回復工事の必要がない上に、店舗の移設ができるのかどうかを確認する期間が必要ないため、早めに売却をすることができます。
居抜き売却のデメリット
居抜き売却にはメリットだけでなくデメリットも存在します。
居抜き売却を考えている人はこれから紹介するデメリットについてもきちんと理解してから売却を進めることが大切です。
デメリットをきちんと理解していないと後からトラブルの原因になることもあるので注意しましょう。
それでは、デメリットをそれぞれ紹介していきます。
赤字が長引く可能性
赤字営業店舗の居抜き売却を考えている人は、買い手がつくまで赤字状態を続けながら営業をしなければなりません。
つまり、赤字を止めようと思っても、営業を続けるため逆に赤字を拡大してしまう可能性があるということです。
早期売却ができれば理想ですが、営業を続けることで発生する固定費が居抜き売却で得ることができる利益よりも多い場合、逆にコストがかかってしまいます。
閉店を先にスタッフに知られてしまう
閉店を決定する場合は、オーナーからスタッフに知らせることが多いですが、「居抜き売却」をする場合、物件の広告が外部に掲載されてしまいます。
店主の口から閉店を知らされるならともかく、インターネットなどで知ってしまった場合は信頼関係にひびが入ってしまう可能性もあります。
また、営業をやめる前にスタッフが退職をしてしまい、営業を続けることができなくなるというケースも考えられます。
店次第では売却しづらい
飲食店はイメージが大切です。
居抜き売却を考えている店舗の印象が悪いと、新しい店舗の印象も悪くなる場合があるため、お店に変な評判がついていると買い手が付きづらいです。
特に最近ではインターネットにたくさんの口コミが掲載されています。
買い手側も口コミは必ず確認していますので、設備に関しての口コミや立地に関しての悪い口コミがあると買い手がなかなかつきづらく売却しづらい可能性があります。
店舗移転の場合は顧客が流れないようにする必要がある
店舗移転をするために居抜き売却を考えている場合は、現在のお店から上手に移転先に顧客を流さなければなりません。
何もせずにただ移転をしてしまうと、既存の顧客が新しく来たお店に流れてしまう可能性があります。
事前に告知をして、来てくれたお客様に対しては「移転する」ということを知らせておくことで顧客が流れてしまうことを回避することができるでしょう。
居抜き売却の流れ
これから居抜き売却を考えているオーナー様に向けて具体的に居抜き売却の流れについて解説していきます。
居抜き売却は一般的に以下の流れで進みます。
- ファーストヒアリング
- 準備・打合せ
- 募集
- 申し込みと内見
- 契約・入金
- 店舗引き渡し
これらの流れを1つずつ解説していきます。
①ファーストヒアリングをする
「居抜き売却」を検討する場合は、まずは査定を申し込みましょう。
査定日を設定すると、担当者が店舗を訪ねてきます。
ヒアリングをした後に売却条件や立地、設備の状態を総合的に考慮して査定額を算出してくれるので、自分の希望とどれほど差があるのか確認することができます。
査定自体は無料で行ってくれる業者が多いので、売却を検討する際はまず査定に来てもらいましょう。
②準備・打合せ
ヒアリングをし、査定額を算出した後は担当者と一緒に売却のための準備を始めていきます。
テナントの場合は居抜き売却をするには貸主の許可を取る必要があるため、この段階で貸主と話し合いをしましょう。
募集のかけ方から売却までの必要期間、造作の価格設定など打合せを重ねながら、どうやって売却を進めていくのかを考えていきます。
③募集をかける
打合せを重ねて、売却までの道筋を立てたら、募集をかけましょう。
募集広告の作成は業者が行ってくれることが多いですが、写真の撮影等、店側で準備することもあります。
広告をどれだけ広く出すのか話し合いながら募集をかけていき、申し込みがあるのを待ちます。
申し込みが少なければ、再度担当者と売却戦略について打ち合わせをしていきます。
④内見・申し込み
内見の希望があったら営業に影響しない時間帯で内見が行われます。
内見では、設備に関して細かい質問をされる場合があるので、質問に答えることができるように準備をしましょう。
「居抜き売却」の場合、購入希望者は設備の状態を気にしていることが多いので、設備が問題なく動作するか、清潔な状態が保たれているかをきちんと確認しておくことが大切です。
⑤契約・入金
買い手が決定し、交渉が終わったら売買契約を結びましょう。
契約書の内容は仲介業者が準備してくれるので、価格に間違いがないかを確認します。
⑥店舗引き渡し
売買契約後に引き渡しをします。
テナントの場合、店舗引き渡し時にはまず、貸主と借主が賃貸借契約を結んだ後、貸主と現在の借主であるあなたが賃貸借契約を解除します。
新しいオーナーに鍵を渡して、引き渡しを終了します。
居抜き売却の種類
居抜き売却の種類は主に
- 造作譲渡
- 現状引き渡し
の2種類があります。
それぞれ売却の条件が異なるので説明をしていきます。
造作譲渡
造作譲渡は居抜き売却をする際に現状引き渡しにせず、厨房設備やテーブル・内装を財産とし、これらの財産を譲渡という形で次の借主に金銭取引を含めて譲渡することをいいます。
造作はテナントオーナーの所有物でないため、造作譲渡をする場合は前の店主を入居者との間での契約になります。
造作譲渡の交渉をするときに準備すべきこと
造作譲渡をする前には、事前に準備が必要です。
造作譲渡を検討したら、まずは店舗のリース品の確認をしましょう。
店舗の閉店時にリース契約が残っている場合、契約打ち切りになりリース設備を返却しなければなりません。
リース設備を買い取ることで、居抜き売却の価格が向上することもあるためリース契約を確認して、支払い額がいくらになるのか確認しておきましょう。
リースに関しての対応方法も仲介業者がアドバイスをしてくれる可能性が高いので、仲介業者を利用している場合は一度聞いてみましょう。
造作譲渡料とは
造作譲渡料とは店舗に残されているものの買い取り費用を指しますが、これは店舗にある造作の状態で決定されるわけではありません。
譲渡費用は店舗の立地や集客力などの総合的な価値によって設定されます。
そのため、造作譲渡は物件の取引に加えて、店舗の権利を売り渡すことと考えるといいでしょう。
現状引き渡し
現状引き渡しとは、前の借主が店舗に内装や設備を置いて行ったものとみなし、無償で渡されたとする場合のことを指します。
造作譲渡と異なり、金銭取引が発生しないことが特徴です。
一般的な「居抜き物件」はこちらのことを指す場合もあります。
少しでも高く売却するための注意点3つ
どうせ売却するのならできるだけ高い金額で売却したいですよね。
実は、居抜き売却で売却価格を上げるためにはいくつか確認したいポイントがあります。
これから紹介するポイントを参考に、少しでも高い価格で居抜き売却をしてみてください!
【注意点①】解約を出す前に相談
解約を出すと大家さんは次の物件入居者を探すために募集を始めるでしょう。
もしも、大家さんが募集をかけて入居者が見つかった場合、次のテナント次第では造作の売却ができなくなります。
次のテナントに原状回復を求められた場合、売却で利益を出すどころか、逆に費用が掛かってしまうことも。
また、退去日が決まった状態での売却は値下げ交渉をされる原因にもなるので注意が必要です。
できるだけ高い価格で売却をしたい場合は、解約を出す前に必ず大家さんに相談をしてください。
【注意点②】使いやすく・汎用性の高い設備
あなたの店舗を買いたいと考えている人がどんな店舗にするかはわかりません。
そのため厨房や内装が使いやすい設備だと、需要が高まるため売却相場も比較的高くなります。
逆にこだわりが強すぎる内装や、使いにくい設備は予想よりも価値がつかない可能性もあるので、購入時に高いお金を払ったといって高く売却できると期待をしすぎないようにしましょう。
次の店舗が使いやすいよう、既存の設備は大切に扱い清潔感を保つことも必要です。
【注意点③】人気のある業態が入れるか
需要が高い業態が入居できるような物件だと、売却相場が高くなる傾向にあります。
時代で人気の業態は変化していきますが、人気のある業態がすぐに営業できる設備が整っていると買い手が付きやすいですし、売却価格も上がります。
買い手のニーズとこちらの造作が合っていると、買い手側にもメリットが大きいため、売却価格が市場より高くても成約する可能性が高いです。
気になる居抜き売却の相場
多くの人が気になる居抜き売却の相場は、大体100万円~300万円です。
ただ、居抜き売却の相場は買い手がどれくらいの予算で出店を考えているのかで変化します。
設備がすでに整っている「居抜き売却」は、すぐに開店できることから人気も高く、売却相場も高額でしたが、最近は「居抜き売却」をしている人も増えてきていることから全体的な相場は下落傾向にあります。
しかし、居抜き売却は買い手のニーズと売り手の造作次第では高い価格を保つことができる場合も多いです。
売却価格が決まるポイント
「居抜き売却」の売却価格が決まるポイントは主に
- 清潔度
- 立地
- 店舗の大きさ
- 店舗の形
です。
実際、相場全体は下落傾向にありますが、上記のポイントで高い評価を得ることができれば、相場以上の価格で売却をすることができます。
それぞれのポイントを確認していきましょう。
清潔さが重要
相場以上の高い価格で「居抜き売却」をしたいのならば清潔さは重要です。
飲食業の場合、厨房や設備が汚れてしまうことはもはや仕方ありません。
しかし、汚れをそのままにしておくと、専門業者でも取れない汚れになる場合があります。
このような汚れがあると、売却価格は下がってしまいます。
高い価格で売却したいのならば、掃除は怠らず清潔な状態を保ちましょう。
店舗の立地
店舗の立地は、「居抜き売却」の売却価格を決めるうえで一番重要です。
店舗を経営する場合、立地によって売り上げが左右されることは多く、集客にも直接かかわってくることから駅から近いことや路面店であれば、売却価格も高くなる可能性があります。
立地が悪くても、消費者のニーズと業態の条件が合わされば売却価格が高くなることもありますので、あきらめずにまずは査定をしてみましょう。
店舗の大きさ
狭すぎても大きすぎてもよくないのが店舗の大きさです。
一般的に10~20坪程度の店舗で席数がきちんと確保できる店舗は需要が高く、売却価格が高くなる傾向があります。
大きすぎる店舗は一人では、うまく回すことができないですし、小さすぎる店舗は収益が見込めません。
また、客単価を上げるためにもそれなりの席数が必要になるため、条件のそろった店舗であれば、高値で売却をすることが可能です。
店舗の形
使いやすい店舗の形というのも、売却価格が決まる上で大切です。
厨房から客席までの導線が取りやすいことや、カウンターの位置など業種によりけりではありますが、店舗の形で使いやすさが変化してきます。
たとえ立地が良くても、あまりにも間取りが奇抜な形をしている場合や、店舗を運営する上で不便になる点がある場合は売却価格が低めに設定されることあるので注意が必要です。
逆に立地が多少悪くても、使いやすい店舗の形が使いやすいと買い手が付きやすいため、売却価格も相場よりも高くつく可能性があります。
失敗しない居抜き売却のコツ5選
居抜き売却で失敗しないためには、いくつかのコツがあります。
トラブルを生まないためにも、これから紹介する売却のコツは押さえておくことがおすすめです。
居抜き売却を成功させるためにもコツをきちんとチェックしておきましょう!
まずは貸主に相談
居抜き売却をするには貸主の許可が必要です。
貸主の許可なく居抜き売却をすることはできません。
居抜き売却をすることが決まったら、早めに相談することで交渉できることもあるので、できるだけ早めに相談することをおすすめします。
リース設備の契約確認
リース設備の契約が残っている場合、造作譲渡という形でそのまま売却することができません。
設備を買い取るなどの方法で売却に対応することは可能なので、まずは契約書を確認してください。
リース契約終了後に無償または安い金額で買い取りができるオプションがついている、所有権移転型のリース契約も一般的ですので、自分のリース契約が買い取りに対応しているかどうか調べてみましょう。
従業員や取引先には誠意をもって伝える
閉店を決定したことを伝える場合、従業員や取引先は戸惑うかもしれません。
売却をすることは、やむを得ない理由があると思いますが、閉店に関しては従業員に誠意をもって伝えましょう。
今まで一緒にお店を続けてきたのに、最後にトラブルになってしまったというケースは少なくありません。
同時に複数の価格交渉をする
居抜き売却を成功させるためには複数の価格交渉を同時に行う必要があります。
選択肢があることで交渉に余裕を持たせることができるため、できるだけ高い価格で売却を成立させることができるでしょう。
一つしか選択肢がないと、「売却しなければならない」という気持ちが大きくなり、結果的に相場よりも低い価格での取引になるケースが多いです。
複数の業者で見積もりを依頼する
仲介業者を利用する場合は、必ず複数の業者で見積もりを依頼しましょう。
複数の業者で見積もりを依頼することで、比較検討ができるため、店舗の適正価格を知ることができます。
相場を知らないで契約をすると後悔することにもつながりますので、査定をする際は複数業者に頼むことがおすすめです。
成功するための仲介業者の選び方!
居抜き売却を成功させるためには正しい仲介業者の選び方をすることが大切です。
近年、「居抜き売却」を取り扱う仲介業者も増加傾向にあるため、どの業者に依頼をすればいいのか悩んでしまうと思います。
仲介業者選びで悩んでいる人はこれから紹介する方法を参考にして選ぶと、居抜き売却を成功させやすくなるのでぜひチェックしてみてください。
スピード感がある業者を選ぼう
居抜き売却においてスピードは非常に大切です。その理由は、売却に時間がかかるとその分賃料もかかるからです。
インターネット上で査定をして、売却価格が高いからというだけで判断をするのではなく、実際に連絡を取ってみて、対応のスピード感を確認しておきましょう。
スピードと同時に、居抜き売却ではタイミングも大切です。
人気の物件でもいつ人気がなくなるかはわかりませんし、逆に全く人気がなかった物件でも急に買い手がつくことがあります。
その時に連絡が遅く、「タイミングを逃してしまった」ということがないように連絡のスピード感がある仲介業者を選びましょう。
業者のサポート体制で選ぶ
一般的に造作譲渡料の中には食器類や調理品が含まれないことも多いです。
しかし、飲食店では大量の食器類を所有していると思います。
サポート体制の整っている業者だとそういった問題についても親身に相談に乗ってくれ、アドバイスがもらえるかもしれません。
担当者が信頼できるかどうか
居抜き売却は担当者との連携がとれていないと、余計なところで時間がかかり、スムーズにいかないケースがあります。
特にスピードやタイミングが大切な「居抜き売却」では、担当者との信頼関係は大切です。
直接話をする際に、担当者の仕事に対する姿勢や信頼関係が築けるかどうかを確認してみてください。
居抜き売却をする際は業者とよく相談して決めましょう
居抜き売却のメリットとデメリット、売却の流れや注意点が理解できましたか?
居抜き売却は退去時にかかるコストを軽減できるだけでなく、営業をできるだけ長く続けることや、売却によって利益を出すこともできます。
売却価格を決める立地や店舗の形に関しては、今から変更することができませんが、設備を清潔に保つことや、集客に力を入れることでお店全体の価値が上がり最終的な売却価格が高くなる可能性もあります。
居抜き売却を検討している店主の方は、ぜひ今回の記事を参考にして、居抜き売却を成功させてください!